Aqua planetology

計画研究

A01 水-岩石反応班

A01 水-岩石反応班

1977年の海底熱水噴出孔の発見以来、地球における海底熱水活動(水-岩石反応)とそれに支えられる原始的微生物生態系の研究が世界的な競争のもと行われてきました。その結果、海洋底探査技術のみならず、極限環境を再現する実験技術や生命活動の熱力学的予測方法論などが目覚しい発展を遂げました。 私たち計画研究A01班では、この40年間で築き上げられた「生命-水-岩石相互作用」に関する最先端の研究手法を、地球外天体、すなわちリュウグウ母天体、火星、氷衛星エンセラダス・エウロパに適用します。まず、水-岩石反応実験から天体海洋組成に影響を与える地質プロセスを実験的に再現することで海洋化学環境を推定することを第一目標とします。そして、海洋環境で代謝可能な化学反応とそれによって得られるエネルギー量を制約し、エネルギー生命圏モデルを構築します。最終的には、これまで「液体の水の存在」のみで議論されてきた生命生存可能性(ハビタビリティ)に「代謝エネルギー論」を加え、新たなハビタビリティの基準を提案することを目標とします。

A01 水-岩石反応班
A02 水 - 氷相互作用班

A02 水 - 氷相互作用班

固体天体表面では太陽光に駆動された活発な化学反応が起き、水素が宇宙に散逸することで不可逆的な表面酸化が生じます。火星はこのような酸化を経験し、酸化鉄に覆われた赤い星となったといわれています。また氷衛星では、これら反応生成物は氷地殻の物性を変化させ、内部海に供給されることで貴重な酸化剤として生命利用可能なエネルギー源にもなります。 私たち計画研究A02班では、このような天体表面でおきる物理化学過程の相互作用を、室内実験により定量化することを目的とします。特に“火星はなぜ赤いのか”と“氷天体テクトニクスはなぜ多様性か”という問いに答えることを目指します。前者では室内実験結果と探査機が明らかにする地質記録を比較し、初期火星の酸化過程や酸素濃度を復元します。後者では氷表面の化学反応や変形流動実験から、氷テクトニクスをモデル化します。上の実験データは氷微惑星/火星/氷衛星の水・物質循環モデルや、生命圏モデルにも組み込まれ領域を支える基盤になります。

A02 水 - 氷相互作用班
A03 モデル班

A03 モデル班

私たち計画研究A03班では、太陽系における水・物質循環に関する実証可能な物理モデルを構築し、多様な水環境を有する太陽系天体が、いかにして作られたのかを明らかにします。実験班(A01, A02班)により定量化された化学過程を、各天体の物理モデルに組み込み、探査・分析データ(B01, B02班)を実証として、太陽系天体の水・物質循環の歴史を紐解くことを目指します。具体的には、小惑星母天体誕生時の原始惑星系円盤の温度環境の復元、惑星の材料物質となった微惑星の含水量の決定を行います。これらの結果をもとに、惑星形成理論を再構築し、地球型惑星への水供給量の決定機構を明らかにすることで、なぜ地球には極めて少量かつ絶妙な量の海が存在するのかを解明します。さらに、地球とは大きさの異なる火星、水量が全く異なる氷衛星についても、化学過程を組み込んだ物質循環の物理モデルを構築し、生命が誕生した地球の普遍性・特殊性を明らかにします。

A03 モデル班
B01 分析班

B01 分析班

私たち計画研究B01班では、太陽系探査がもたらす惑星物質に残された化学反応の痕跡から、各天体の過去から現在に至る環境変遷を読み出すことを目的としています。そのためには、環境進化の情報を的確に反映する分子地球化学プロキシを開発するとともに、惑星物質から必要な化学情報を引き出して環境推定ができる分析体制を確立することが鍵となります。特に元素の化学状態解析に必須な先端分析法であるX 線顕微鏡(STXM)を高度化することで、30 nm という高い空間分解能で、炭素などの軽元素の官能基分布や、ケイ素・鉄などの化学状態を明らかにし、惑星物質が持つ分子地球化学情報をフルに抽出します。同時に、元素の性質に立脚したその挙動予測に基づく分子地球化学プロキシを確立し、地球上の様々な環境での実証テストを経て、惑星の水や大気の物理化学情報(pH、酸化還元状態、CO2 分圧など)を元素の濃度・化学種・同位体から推定する手法の開発も目指します。最終的には、はやぶさ2 の帰還試料が入手され次第、分子地球化学プロキシを駆使して、C 型小惑星母天体の実証的な環境復元を世界で初めて行います。

B01 分析班
B02 探査班

©JAXA

B02 探査班

海をたたえる地球、地下水圏や海を失った火星、氷の下に内部海を宿す木星や土星の衛星など、太陽系天体は様々な表層水環境を保持してきました。私たち計画研究B02班では、汎惑星表層進化の理解のため、小惑星探査機はやぶさ2 による微惑星復元を足がかりに、火星・氷衛星の水環境システムを、探査データ・帰還試料を通じて実証的に総合していくことを目的とします。 はやぶさ2は、微惑星の破片が集まってできたC 型小惑星リュウグウを探査します。リュウグウ表面には母天体(氷微惑星)の内部構造の露出が予想されるため、その探査データの解析を通じ、母天体の水・物質分布と水-岩石反応を明らかにすることを目的とします。これにより、地球や火星の水の起源となった可能性がある氷微惑星の含水量が推定されるだけでなく、地球へ持ち帰る試料の地質学的産状の復元が可能となります。火星に関しては、水-岩石反応の結果として生じる反応生成物の層序を復元し、表層および地下水圏を通じた水・物質循環過程の時代変遷の解明を目指します。氷衛星に関しては、内部海から噴出する塩水プルームや表面氷の組成を決定し、水-氷-岩石反応過程に制約を与えることを目的とします。

B02 探査班

©JAXA

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